犬の三尖弁閉鎖不全症について┃違う病気から併発することも
2024.01.10
三尖弁閉鎖不全症
三尖弁とは、心臓の右心房と右心室の間にある弁のことです。通常、心臓では右心房から右心室へと血液を送り出しており、三尖弁はこの血液の循環にそって開いたり閉じたりしています。三尖弁閉鎖不全症とは、この三尖弁が変性してしまい、うまく閉じなくなることで、右心室から右心房へ血液の逆流が起こる状態です。
今回は、犬の三尖弁閉鎖不全症の原因や症状、診断・治療法などについて解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
三尖弁閉鎖不全症には、原発性と続発性の2つの原因があります。
原発性としては、生まれつき三尖弁が正常に形成されていない場合があります。これは遺伝的要因によるもので、弁の形状異常や発育不全が原因で起こります。
一方、続発性な要因として特に多いのは、左心房と左心室の間にある僧帽弁の異常で発症する「僧帽弁閉鎖不全症」が進行し、左心系だけでなく右心系にも負担がかかることによるものです。
その他にも心内膜炎や肺高血圧症、フィラリア症、肺動脈弁狭窄なども続発性の原因として挙げられます。
症状
血液循環がうまくいかないため、心臓が酸素を含む血液を全身に送り出せず、その結果食欲不振や動くと疲れやすくなる、苦しそうな呼吸、舌や歯茎などの粘膜が紫色になる(チアノーゼ)、失神、腹水貯留などの症状が現れます。
初期段階では、症状が軽微または全く現れないこともありますが、病気が進行するにつれて、これらの症状はより顕著になります。
診断方法
まず、身体検査により三尖弁閉鎖不全症の特徴的な心雑音の聴取や、腹部膨満など腹水貯留の所見がないかを確認します。
そして、X線検査で右心拡大や腹水貯留などを確認し、エコー検査で心臓や三尖弁の形、三尖弁での血液の逆流を評価することにより診断されます。
治療方法
三尖弁閉鎖不全症の治療には、心臓の負担を減らすため強心剤や利尿剤、血管拡張剤などの薬剤を投与したり、ナトリウムを制限した療法食を与えます。
また、腹水貯留が認められ、それに伴う症状が現れている場合には、腹水抜去が必要です。腹水が貯まりやすいなど症例によっては、高蛋白・高カロリー食の食事療法が推奨されます。
予防法やご家庭での注意点
三尖弁閉鎖不全症を予防する明確な方法は今のところありません。
しかし、発症の原因の一つとなるフィラリア症については、予防薬を月に一回与えることで予防が可能です。
またなるべく早く発見して、内服治療を早期に開始することで進行を緩やかにできるため、定期的な健康診断を受けることをおすすめします。
まとめ
犬の三尖弁閉鎖不全症は、明確な初期症状がほとんどないため、病気に気付くことが遅れてしまう場合も多くあります。治療の開始時期によっては予後を左右するため、早期発見・早期治療のためにも定期的な健康診断を受けるようにしましょう。
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