猫の血圧測定は腎臓の保護に繋がる?|測定から治療まで徹底解説
2025.03.06
猫の血圧測定は腎臓の保護に繋がる?|測定から治療まで徹底解説
猫の健康を守るために「血圧測定」が重要なことをご存じでしょうか?特に高齢の猫では、血圧の管理が健康維持に直結すると言われています。猫の血圧測定は腎臓病などの重大な疾患を早期に発見するための有効な手段であり、症状が現れる前に予防するための重要な方法です。
今回は猫の血圧測定の仕組みやその必要性、そして治療の流れまでを詳しく解説します。
■目次
1.原因と症状
2.合併症
3.診断方法
4.治療方法
5.よくある質問(Q&A)
6.まとめ
猫の高血圧は、血管内の血流に対する抵抗が増加することで発生します。具体的には、血管が狭くなったり、硬くなったりすることが原因となります。この状態は特に高齢の猫で多く見られ、加齢に伴い血管の弾力性が低下することで、高血圧が発生しやすくなります。
猫の高血圧は、見ただけではわかりにくく、症状が現れた時点ではすでに病状が進行していることが多いのが特徴です。例えば、高血圧による目の異常が発生し、失明してから気づく場合も少なくありません。このように、発見が遅れると治療が難しくなるため、症状が出る前の早期診断が非常に重要です。
高血圧は猫の体にさまざまな影響を及ぼし、以下のような合併症を引き起こすことがあります。
<目の異常>
網膜剥離や失明が代表的です。高血圧による血管の損傷が視力に大きな影響を与えることがあります。
<心臓病>
血圧が高い状態が続くと、心臓に負担がかかり、心肥大や心不全のリスクが高まります。
<脳の障害>
高血圧は脳出血や脳梗塞など、致命的な脳の疾患を引き起こす原因にもなります。
<腎臓病>
特に注意が必要なのが腎臓との関係性です。高血圧によって腎臓の血管が損傷し、腎機能が低下するリスクがあります。また、逆に腎臓病が高血圧を引き起こすこともあります。
高血圧と腎臓病の関係は非常に密接で、以下のようなパターンが見られます。
<高血圧が原因で腎臓病を悪化させるパターン>
高血圧によって腎臓の血管がダメージを受けることで、腎機能が低下し、最終的には腎不全に至る場合があります。
<腎臓病が原因で高血圧になるパターン>
腎臓は血圧を調節するホルモンを分泌する重要な臓器ですが、腎臓病になるとこのホルモンのバランスが崩れ、高血圧を引き起こします。
これらのサイクルにより、猫の健康状態がさらに悪化してしまうことがあるため、腎臓病の管理と高血圧の予防と治療はセットで考えることが重要です。
猫の血圧測定は、動物病院で行われることが一般的です。その具体的な方法や注意点は以下の通りです。
<血圧測定の方法>
血圧測定は、猫の前肢や尾に「カフ」と呼ばれる装置を巻き付けて行います。このカフに空気を送り込み、血流の圧力を測定します。この方法は痛みを伴わず、猫に大きな負担をかけることはありません。
<猫の性格に応じた対応>
神経質な猫の場合、動物病院の環境にストレスを感じて血圧が上がることがあります。このような場合、ゲージに入れて安心できる環境を作り、暗い部屋で測定するなど、猫の性格に応じた対応を行います。こうした工夫により、できるだけ正確な値を測定します。
<複数回の測定が必要>
一度の測定で「高血圧」と診断することはできません。猫は緊張しやすく、その場の状況により血圧が一時的に上がる「白衣性高血圧」が見られることがあります。そのため、複数回の測定を行い、その平均値を基に診断を下します。
猫の高血圧は、主に降圧薬による治療で管理します。代表的な薬には、血管を広げて血圧を下げる「アムロジピン」、腎臓の保護効果もある「ベナゼプリル」、最新の治療薬である「テルミサルタン」などがあります。治療は少量から始め、血圧を急激に下げすぎないよう慎重に進めます。
また、一度の測定で高血圧と診断せず、複数回の測定と経過観察を行いながら治療を進めます。治療中は定期的に血圧をモニタリングし、薬の効果を確認することが重要です。
腎臓病や心臓病が原因となる場合は、それらの疾患への対応も必要です。さらに、ストレスを軽減し、健康診断を定期的に受けることで、より良い治療効果が期待できます。
Q:腎臓病を引き起こすと必ず高血圧になるの?
A:必ずしもそうではありませんが、腎臓病の猫は高血圧になる可能性が高くなります。
Q:血圧の測定は痛いの?
A:痛みはありません。カフで軽く圧力をかけるだけなので、猫にとっても負担が少ない方法です。
Q:投薬は一生続けるの?
A:状況が安定するまで治療を継続する必要があります。症状が改善すれば、薬を減らす場合もありますが、獣医師と相談して慎重に進めましょう。
Q:食事制限は必要?
A:高血圧自体には食事制限は必要ありません。ただし、猫用フードを与えるようにし、人間用の食べ物は避けてください。
Q:血圧測定の頻度は?
A:治療開始後は、落ち着くまで定期的に測定します。その後、状態に応じて測定の間隔を延ばしていきます。
猫の血圧測定は、腎臓の健康を守るために欠かせない健康管理の一環です。高齢猫の場合、年に2回以上の血圧測定を含む健康診断を受けることが推奨されます。また、腎臓病などの持病がある場合は、血圧管理をしっかり行うことで病状の悪化を防ぐことができます。
愛猫の健康を守るために、日頃のケアとともに定期的な健康診断を受けることを心がけてください。何か気になる点があれば、当院にご相談ください。
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