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犬の僧帽弁閉鎖不全症

2021.06.02

中〜高齢期のワンちゃんによく見られる病気の一つに心臓病があります。

そんな犬の心臓疾患の中でも最も多く診られるのが【僧帽弁閉鎖不全症】です。

 

僧帽弁閉鎖不全症とは?

心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室と4つの部屋に分かれており、血液は一方通行で流れています。そのため各部屋には血液の逆流を防ぐ【弁】がついており、その一つが【僧帽弁】です。

【僧帽弁】は、左心房と左心室の間にある弁です。

 

僧帽弁閉鎖不全症とは逆流を防ぐための弁のひとつである【僧帽弁】が正常に閉まらなくなる状態のことを言います。

遺伝的な問題や加齢に伴い僧帽弁が肥厚したり歪んだりすることで、きちんと閉じることが出来なくなり逆流が起こり始め、これにより僧帽弁を支える【腱索】が伸びたり断裂したりすることで症状が一気に悪化します。

血液の逆流によって起こる全身の血流不足を補うため、心拍数の増加や心臓の拡大が起こり心不全症状を引き起こします。

 

症状

初期段階だと症状はほとんど見られません。

運動を嫌がる、疲れやすい、寝ている時間が増える等の症状が見られる場合もありますが、これらは年齢によるものと思われがちで、病気と気付いてあげられないことも多いです。

病気が進行すると見られる症状

・発咳

・安静時でも呼吸が速く苦しそうになる

・舌の色が紫色又は白っぽい

・食欲不振

・体重減少

・失神

さらに重度になると肺に水がたまる【肺水腫】を起こします。その場合は命に関わりますので早急の治療が必要です。

また、全身の血液の流れが悪くなるために肝臓や腎臓などにも負担がかかり異常が出てくる場合もあります。

 

診断

心臓の聴診を行い、心雑音の確認が必要になります。

心雑音あり=心臓病 ではない場合もあるので必ず詳しい検査が必要です!

 

心雑音が確認されたら

心臓の異常がある箇所は何処なのか?どの程度の進行状態なのか?について確認することがとても大切です。

・心臓超音波検査

心臓内の血行動態の確認

弁の肥厚や歪みの確認

血液の逆流量の確認

心臓機能の評価

・胸部レントゲン検査

心臓の大きさの確認

気管支の圧迫の確認

肺のうっ血や肺水腫の確認

・心電図

不整脈の確認

心機能の評価
・血液検査  肝臓や腎臓など他の臓器への影響の確認

 

治療

心臓病の治療の基本はお家での投薬です。

お薬を使用することにより、症状を和らげ病気の進行を遅らせます。

心臓病の進行度やワンちゃんの状態に応じてお薬を調整していきます。

完全に治る病気では無いため、治療を開始したら投薬は毎日切らさず生涯継続することが必要です。

投薬忘れが多かったり途中でやめてしまったりすると、逆に心臓への負担が増えてしまい心臓病の進行を早めてしまう場合もあります。

※外科による治療もありますが、手術の対象かどうかは専門医による診断が必要です。希望される場合には専門病院や大学病院をご紹介します。

 

 

心臓病になってしまったら(注意すること&気にすること)

激しい運動や興奮する状況を避ける

・咳の確認(どんな時に出るのか?長く続くのか?1日に何回出るのか?など)

・舌色の確認

・過度な肥満は心臓への負担を大きくします

・1日1回安静時の呼吸数を確認しましょう

※安静時(睡眠中等)の正常な呼吸数は1分間に40回以内です。正常よりも多い場合には肺に疾患がある可能性があります。

 

僧帽弁閉鎖不全症は、中〜高齢のワンちゃんに多いために症状が出ても「年だからしかたない」と思われがちで、病気の発見が遅れることが多い病気です。

年1回のワクチン接種の時やそれ以外にも定期的な聴診により、心臓病の早期発見をする事が出来ます。

「最近病院に行ってないかも?」や「最近年のせいか大人しくなった。」などありましたら、まずは診察を受けてみましょう。

 

 

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