犬と猫の腸閉塞について|早期発見・早期治療が重要
2024.08.20
犬と猫の腸閉塞について|早期発見・早期治療が重要
腸閉塞とは、腸の中を通る内容物が物理的に通過できなくなる状態のことです。犬や猫では、異物の誤飲や腫瘍が原因で発生します。内容物がどれだけ通過したのかによって症状の重さは異なりますが、主に下痢や嘔吐、便秘、食欲不振などが見られます。
腸閉塞では、完全に通過できない完全閉塞や不完全閉塞であっても腸や周囲の血管にダメージが及んだ場合、治療が遅れると急死することもあります。
そのため、愛犬や愛猫が腸閉塞を起こしたら、早期発見・早期治療を行うことが重要です。
今回は犬や猫の腸閉塞について、原因や症状、治療方法などをご紹介します。
■目次
1.原因
2.リスク要因
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.予後について
7.予防とご家庭での注意点
8.まとめ
原因
腸閉塞を起こす原因は、以下が挙げられます。
異物の誤飲
おもちゃや果物の種、石、靴下など誤飲した異物が胃を通過して腸で詰まってしまうケースが多く見られます。
異物を飲み込んだのを見た、その可能性がある場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
異物が紐状で肛門から一部が出ていても、絶対に引っ張らないでください。紐状の異物は腸に引っかかっていることが多く、無理に引っ張ると腸が引きつられて破れる可能性があります。それにより腸内の細菌が腹腔に広がり、腹膜炎や敗血症を起こす危険性があります。もし犬や猫が気にしているようであれば、ハサミで短く切ってから、すぐに受診してください。
腫瘍
腸の内側に腫瘍ができると、腸の内容物は通過を妨げられ、腸閉塞になります。
また、腸の外側や周囲組織の腫瘍が外から腸を圧迫して、閉塞を起こすこともあります。良性腫瘍であるポリープも腸閉塞の原因になることがあります。
腸重積
腸の一部が後ろにある腸に引き込まれて重なってしまうことで、腸閉塞を起こします。
寄生虫
腸内に寄生虫が大量にいると、それ自体が腸を詰まらせることがあります。また、腸重積を引き起こすことで腸閉塞を起こします。
そ径ヘルニア・会陰ヘルニア・臍ヘルニア
そ径ヘルニアや会陰ヘルニア、臍ヘルニアなどにできた腹壁の裂け目に腸が入り込むことで、腸閉塞を起こします。
腹壁の裂け目に入り込んだ腸が戻らなくなることを「嵌頓(かんとん)」と言いますが、この状態になると腸が締め付けられて腐ってしまうこともあります。
リスク要因
腸閉塞を起こすリスクは、以下が挙げられます。
誤飲癖のある犬・猫
犬や猫の腸閉塞で最も多い原因は、異物の誤飲誤食です。特に好奇心旺盛な子犬や子猫の時期は、身の回りのものを口に入れてしまうことが多いため、異物の誤飲誤食を起こすケースが多く見られます。
犬種・猫種
(犬の場合)
ジャーマン・シェパードドッグは腸重積の報告が多く、ミニチュア・ダックスフントは大腸ポリープの報告が多いことから、他の犬種よりも注意が必要です。
(猫の場合)
リンパ腫への罹患頻度が高いシャムやシャム系の猫種で、消化管にリンパ腫が見られる場合は、腸閉塞を起こしやすいです。
さらに、猫では毛繕いで飲み込んだ毛が腸に詰まることもあるため、短毛種よりも長毛種の方が腸閉塞を起こすリスクが高いとされています。
症状
腸閉塞を起こすと、以下の症状が見られます。
・嘔吐
・食欲不振
・腹痛
・便秘または下痢
・元気消失
・腹部の膨満
症状はどの程度閉塞を起こしているかによって異なりますが、完全閉塞では食欲がなくなり、飲み込んだものを何回も吐くようになります。
一方、不完全閉塞で腸の内容物が詰まったり流れたりが繰り返されると、症状が現れないことがあります。しかし、放置すると腸へのダメージが蓄積して治療が困難になるケースも多く見られています。そのため、軽度であっても症状が見られたら、様子を見ずに早めに動物病院を受診してください。
診断方法
腸閉塞と同じ症状が見られる病気は多岐にわたるため、それらと鑑別するために、以下の検査を行います。
・身体検査
・レントゲン検査
・造影レントゲン検査
・超音波検査
・血液検査
一時的な急性胃腸炎が疑われる場合、まずは胃腸炎の治療を行い、その反応を観察することもあります。
異物の誤飲が疑われる場合は、レントゲン検査や超音波検査といった画像診断を行うことにより、腹腔内の腫瘍を発見することができます。
消化管に内容物の通過障害が起きていないか、どの部分で腸閉塞が起きているのかを確認する場合はレントゲン検査や超音波検査、造影レントゲン検査の結果から判断します。
血液検査では内臓の数値に異常がないか、全身状態を把握するために行います。
治療方法
腸閉塞の治療は原因によって異なります。
異物を誤飲した場合は、まず検査で異物が詰まっている場所を特定します。内視鏡で取り除ける場合は、全身麻酔下で内視鏡を使って異物を摘出します。閉塞部位が特定できない場合や内視鏡で取れない場合は、開腹手術を行います。
腫瘍が見られる場合は、手術を行って腫瘍を切除します。その後、切除した腫瘍を病理検査に提出し、術後の治療プランを立てます。
腸重積の場合も開腹手術を行います。腸にダメージが及んでいる場合は、腸管ごと切除することもあります。
また、脱水に対する治療として輸液療法を行います。
腸閉塞の手術後は食事管理を徹底するとともに、炎症や感染症を防ぐために、内科治療を行います。
腸閉塞の治療は基本的に手術や内視鏡による異物の除去を行いますが、軽度の場合は投薬による内科的な管理で経過を観察することもあります。
予後について
腸閉塞は早期発見・早期治療で完治できる病気ですが、対応が遅れると閉塞している腸に深刻なダメージが及ぶことがあります。腸が破れて内容物が腹腔内に漏れ出し、細菌性腹膜炎を起こすと、最悪の場合、敗血症性ショックで死に至ることもあります。
予防とご家庭での注意点
腸閉塞を起こす最も多い原因は異物の誤飲です。そのため、異物の誤飲を予防することが腸閉塞の予防に有効です。誤飲癖のある犬や猫の周りには、食べてしまいそうなものを置かないようにしましょう。また、おもちゃで遊ぶときは目を離さず、遊び終わったら手の届かないところに片付けてください。
また、おもちゃ選びも重要です。外側が破れて中身を食べてしまう可能性があるぬいぐるみは避けましょう。口よりも大きなおもちゃを選び、簡単に壊れないものを選ぶことが大切です。口にちょうど入るサイズのおもちゃは丸呑みして窒息する恐れがあるため、避けましょう。
腸閉塞の原因となる腫瘍や寄生虫、ヘルニアなどの疾患は定期的に健康診断を受けることで早期に発見することができます。
まとめ
腸閉塞は早期発見・早期治療で完治できる病気ですが、対応が遅れると死に至ることもあります。
腸閉塞を防ぐためには、普段から異物の誤飲を予防し、疑わしい症状が見られたら早めに受診することが大切です。
また、一見元気そうに見えても腸閉塞を起こしている可能性があるため、定期的に健康診断を行い、病気の早期発見と早期治療を心がけましょう。
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