呼吸がおかしい?|犬と猫の胸水について
2024.05.21
呼吸がおかしい?|犬と猫の胸水について
胸水とは、胸部にある肺や心臓の外側に異常な量の液体が溜まってしまう病気のことを指します。この状態になると呼吸機能に影響を及ぼし、治療を怠ると命に危険を及ぼすことがあります。
また、胸水が大量に溜まると肺が圧迫され、呼吸困難になり、酸素不足から皮膚や舌が青色に変色するチアノーゼなどの症状が現れます。
そのため、愛犬や愛猫に普段とは異なる呼吸が見られたら、早めに動物病院で適切な治療を受けることが大切です。
今回は犬や猫の胸水についてご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
胸腔という肋骨や横隔膜、背骨に囲まれた空間には、心臓や肺、気管支、食道、大動脈などがあります。
通常、健康的な犬や猫にも胸腔内に少量の液体が存在しますが、溜まりすぎないように調節されています。しかし、何らかの原因でこの調節機能に障害が起きると、液体が大量に溜まり、呼吸機能に悪影響を及ぼします。
犬や猫が胸水を引き起こす原因には下記が考えられます。
犬
・外傷
・フィラリア症
・腎臓病
・肝臓病
・横隔膜ヘルニア
・胸腔内の悪性腫瘍(がん)
・低アルブミン血症といった胸腔以外の臓器の異常
・僧帽弁閉鎖不全症など心臓疾患
・肺炎や気管支の炎症など胸腔内による臓器の異常 など
猫
・心不全
・低アルブミン血症
・炎症や感染
・腫瘍
・出血
・横隔膜ヘルニア
・猫伝染性腹膜炎(FIP)(「猫コロナウイルス」の突然変異によって発症する病気) など
また、胸腔内に溜まる液体の成分には様々な種類があり、膿が溜まる「膿胸」や血液が溜まる「血胸」、乳白色のリンパ液が溜まる「乳び胸」などがあります。
これらの液体は必ずしも無色透明ではなく、その色や性質によって原因は異なります。
胸水の種類別の原因としては下記のとおりです。
膿胸
・外傷
・異物の侵入
・食道裂孔
・腫瘍
・肺炎からの波及
・肺膿瘍の破裂
・椎間板や脊椎炎からの感染拡大
・血液やリンパを介した感染拡大
・寄生虫の侵入
血胸
・外傷
・血友病
・血小板減少症
・肺葉捻転
・肺膿瘍の破裂
・フォンヴィレブランド病(血が止まりにくくなる遺伝性血液疾患)
乳び胸
・心筋症
・先天性心疾患
・心膜疾患
・真菌性肉芽腫
・縦隔内リンパ腫
・横隔膜ヘルニア
症状
胸腔内に液体が溜まると肺が正常に拡張できなくなり、これが原因で呼吸困難を引き起こします。さらに、呼吸が浅くなり呼吸の回数が増えることによって酸欠状態に陥り、チアノーゼなどの症状が現れます。
また、すぐに疲れる、食欲不振、咳が出るなどの症状が見られることがあります。
診断方法
まず、全身の健康状態を確認するために、呼吸の様子や心音、胸部の聴診を含めた身体検査を行います。
その後、胸部のレントゲン検査で胸腔内の液体の存在を確かめます。
また、胸水が発生したより詳しい原因を探るために、血液検査、全身のレントゲン検査、超音波検査、CT検査などを行います。
さらに胸水検査では、胸水に含まれている成分や細胞などを調べ、胸水が出ている原因を探ります。
治療方法
治療の中心は主に原因となる病気への対処を行います。しかし、重度の呼吸困難が見られる場合は、肋骨の間に針を刺したり、胸腔内にドレーンを設置したりすることによって、胸水を抜きます。
この処置をすれば一時的に呼吸は楽になりますが、胸水が溜まる原因を特定できない限り、再び溜まってしまう可能性があります。
また、心臓疾患が原因の場合は心臓機能を支える薬物療法が行われ、肺疾患が原因の場合は適切な抗生物質や他の治療が施されます。
さらに、溜まった液体が漏出液である場合は、維持療法として利尿剤の投与を行うだけで症状の改善が見られることもあります。
予防法やご家庭での注意点
胸水は突然発症するというよりは、他の病気の進行に伴って発症することが多いです。そのため、定期的な健康診断を行うことで病気を早期発見、早期治療によって胸水を予防することができます。
もし愛犬や愛猫の呼吸が速い、異常に疲れやすい、食欲がないなどの症状が現れた場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
まとめ
犬や猫の胸水は、早期発見と早期治療が非常に重要です。
愛犬や愛猫の呼吸が普段よりもおかしいと感じたら、すぐに獣医師に相談しましょう。
早めに対応することが健康を守るカギとなります。
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