犬の炎症性腸疾患(IBD)について|原因と治療法を解説
2024.11.05
犬の炎症性腸疾患(IBD)について|原因と治療法を解説
犬の炎症性腸疾患(IBD)とは、原因が明確ではない慢性的な消化器症状を引き起こす病気です。この疾患は腸の粘膜に炎症が生じ、下痢や嘔吐、体重減少などの症状を引き起こします。IBDは免疫系の異常が関与していると考えられており、犬の生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
今回は犬の炎症性腸疾患(IBD)について、症状や原因、治療方法などをご紹介します。
■目次
1.症状
2.原因
3.診断方法
4.治療方法
5.予後と管理
6.ご家庭での注意点
7.まとめ
IBDの一般的な症状は、主に以下が挙げられます。
・下痢、嘔吐
・体重減少
・食欲不振 など
これらの症状は通常3週間以上続き、一般的な消化器疾患とは異なり、下痢止めが効かず、血清タンパク(アルブミン)の低下が見られることが多いです。また、IBDは特定の犬種や年齢、性別に発症しやすい傾向があります。
IBDの原因は完全に解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因
ジャーマン・シェパードやボストン・テリアなど特定の犬種に多く見られることから、遺伝的要因が関与している可能性があります。
環境要因
環境の変化やストレスがIBDの発症に影響を与えることがあります。
食事関連要因
食物アレルギーや不耐性がIBDの発症に関与していることがあります。
免疫系の異常
自己免疫反応が腸の炎症を引き起こすと考えられています。
IBDの診断には、以下のようなさまざまな角度からのアプローチが必要です。
病歴と身体検査
症状の詳細を把握し、他の疾患を除外するための聴診や触診など基本的な検査を行います。
血液検査と便検査
炎症の程度や他の病気の可能性を評価します。
画像診断
X線や超音波検査を用いて、消化管の状態を確認します。特に超音波診断が有効です。
消化管内視鏡検査と生検
内視鏡を用いて直接腸の状態を観察し、組織を採取して詳細な分析を行います。
IBDの治療は、症状の管理と生活の質の向上を目的としています。
投薬療法
ステロイドや抗生物質を使用します。ステロイドの効果が不十分な場合は、他の免疫抑制剤を併用します。
食事療法
免疫抑制剤(シクロスポリンなど)は薬価が高いため、まずは療法食を使用して食事による刺激を減らします。食事療法を優先することで、飼い主様の負担を軽減できます。
プロバイオティクス
腸内細菌叢を正常化し、腸の健康をサポートします。
その他の補助療法
必要に応じて、症状を緩和するための補助療法を行います。
IBDは長期的な管理が必要な疾患です。ステロイドは最低4週間ほど継続して投与する必要があり、通常の胃腸炎と比べて治療に時間がかかることを飼い主様に理解していただくことが重要です。
病状の変化を把握するために、定期的な血液検査などのモニタリングが欠かせません。さらに、愛犬や愛猫の生活の質を改善するために、食事療法も取り入れることが重要です。
ご家庭では、以下の点に注意することが大切です。
食事管理
療法食を適切に与え、食事の変更が必要な場合は獣医師と相談しましょう。
ストレス軽減
環境の変化を最小限にし、ストレスを軽減する工夫を行いましょう。
症状悪化時の対応
症状が悪化した場合はすぐに獣医師に相談し、適切な処置を受けます。
継続的な投薬
症状が改善しても、指示された投薬を継続することが重要です。
犬のIBDは早期発見と適切な管理が重要です。定期的に獣医師と相談し、根気強く治療を続けることで、犬の生活の質を維持することができます。また、飼い主様の理解と協力が、治療の成功に大きく影響します。
当院では大切な家族の一員である愛犬の健康を守るため、経験豊富な獣医師が心を込めて診察します。ご不明点などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
埼玉県越谷市・吉川市・松伏町を中心に診察を行う おがわ動物病院
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