繰り返す皮膚トラブル|犬や猫のアトピー性皮膚炎について
2024.09.26
繰り返す皮膚トラブル|犬や猫のアトピー性皮膚炎について
アトピー性皮膚炎は若い犬や猫に見られる皮膚病です。この病気を引き起こすと強い痒みが生じます。犬や猫が痒みから舐めたり引っ掻いたりすることで、皮膚炎を引き起こし、細菌や真菌が増殖しやすくなります。その結果、膿皮症やマラセチア性皮膚炎などの皮膚病が発生しやすくなり、治療をしても再発しやすくなることがあります。
また、アトピー性皮膚炎は体質によるもので、完全に治すことは難しいため、生活環境の改善や食事管理、定期的なグルーミングなどで症状をコントロールしながら、うまく付き合っていくことが大切です。
今回は犬や猫のアトピー性皮膚炎について症状や治療方法、予防法などをご紹介します。
■目次
1.症状
2.原因
3.診断方法
4.治療方法
5.予防とご家庭での注意点
6.まとめ
アトピー性皮膚炎の主な症状は強い痒みです。
以下の部位に湿疹、赤み、脱毛などの症状が見られます。
・目のまわり
・口まわり
・指や指の間
・足の外側
・脇
・肘の内側 など
これらの部位を舐めたり引っ掻いたりすることにより、皮膚が傷つき、炎症や感染が生じることで、感染性の皮膚炎などを引き起こすことがあります。
皮膚には、体表の細菌や真菌から体を守るバリア機能が備わっていますが、アトピー性皮膚炎ではこの皮膚のバリア機能が低下するため、細菌や真菌が繁殖しやすく、膿皮症(細菌性皮膚炎)やマラセチア性皮膚炎を発症しやすくなります。
通常であればこれらの病気は治療により治りますが、なかなか治らなかったり、たびたび再発したりする場合は、アトピー性皮膚炎が疑われます。
ほかにも、外耳炎になりやすいなどの特徴が見られることがあります。
アトピー性皮膚炎の症状は、気温が上がる夏場に悪化しやすいです。ほかにも、花粉など季節ごとに増える環境中のアレルゲンに反応して症状が出る場合、そのアレルゲンによりさらに症状が重くなります。
また、症状は早ければ生後3ヶ月~6歳くらいまでに現れることが多いとされています。
アトピー性皮膚炎は、以下の環境中のアレルゲンに体の免疫が過剰反応することで起こります。
・花粉
・ハウスダスト
・ダニやカビ
犬や猫がアトピー性皮膚炎を発症する原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因が大きく影響していると考えられています。
アトピー性皮膚炎は以下の犬種で多く見られますが、どの犬種や猫種でも発生します。
・柴犬
・フレンチ・ブルドッグ
・パグ
・シーズー
また、偏った食事やストレスなどが原因で皮膚バリア機能が低下し、症状が悪化してしまうケースもよく見られます。
診断では、アトピー性皮膚炎と同じ症状を持つ病気の除外が重要です。
まず、獣医師が患部を観察し、必要に応じて皮膚の検査を行います。
アレルゲンを特定するためにアレルギー検査を行うこともありますが、アトピー性皮膚炎が強く疑われる場合は、アトピー性皮膚炎に対する治療薬(アポキル)の処方を実施することもあります。
また、同じアレルギーによる皮膚炎のなかでも、食事に反応するアレルギー性皮膚炎でないかを確認するために、アレルギー除去食試験を行うこともあります。
アトピー性皮膚炎の治療は、以下の方法で実施します。
痒みのコントロール
ステロイドや抗ヒスタミン薬、免疫抑制剤などの投薬、塗り薬、サプリメントなどで症状を軽減します。
当院では、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎に対して「アポキル」という治療薬を使用しています。この薬は痒みの伝達をブロックするもので、アレルギーに対して非常に有効な治療薬です。
スキンケア
皮膚のバリア機能を正常に維持するために行います。特に、定期的なシャンプーと保湿が重要です。シャンプー剤は刺激が少なく保湿性の高いものを使用しましょう。犬や猫の皮膚は人間と比べて薄く、とてもデリケートです。皮膚の乾燥はバリア機能を弱め、皮膚炎などを起こすため、シャンプー後は必ず保湿をするようにしてください。
アレルゲン除去
前述したようにアトピー性皮膚炎は、環境中のアレルゲンに反応して皮膚に炎症を起こすため、犬や猫をアレルゲンから遠ざけることも重要です。
そのため、室内ではハウスダストやダニなどがいないよう綺麗に掃除する、散歩の際は服を着せる、帰宅時にブラッシングをして軽く体を拭くなどの対策を講じましょう。
食事管理
食事内容も皮膚のバリア機能に影響するため、栄養バランスの整った食事を与えるようにしましょう。また、皮膚にトラブルがある犬や猫に対する療法食もあります。
これらの方法はどれか1つではなく、組み合わせて行うことが重要です。
アトピー性皮膚炎は生まれつきの体質的なものもあるため、予防は難しいですが、痒みが続くことは犬や猫にとってもストレスが溜まってしまいます。そのため、体をよく舐めている、目の周りが赤いなどの症状が見られたら早めに動物病院を受診することが大切です。
アトピー性皮膚炎を完全に治すことは困難ですが、症状が悪化する前に早期発見・早期治療を行うことが大切です。愛犬や愛猫に気になる兆候が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
また、治療は長期間にわたることが多いため、獣医師と飼い主様との強い信頼関係を築き、定期的な診察や相談を重ねることで、愛犬や愛猫の健康を良好な状態に保つことが重要です。
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